冬の物語
比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として栄えた坂本は、今も当時の面影を色濃く残しています。ぶらりと歩ける街並みを紹介する「街並みぶらり探訪」。今回は、そんな歴史スポット坂本へ。紅葉の名所としても名高い〝坂の街〟を訪ねました。
…里坊
- 里坊とは
- 比叡山延暦寺の僧侶の隠居所。その多くに穴太衆積みの石垣と美しい庭園が見られます。現在残っているのは約50軒。一部は特別公開時に拝観可能。滋賀院門跡は常時公開されています。
街歩きのスタートは京阪坂本駅の斜め向かいにある観光案内所から。「坂本の街の魅力を堪能するなら、日吉参道(馬場)だけでなく〝作り道〟や〝御殿馬場〟などの街なかの道を巡ってみてください」と話す坂本観光協会事務局長の石川寿夫さん。「私が個人的に好きな場所は滋賀院門跡から慈眼堂の庭を通り抜け、小さな川を渡って日吉参道に出るルート。観光客が少なくおすすめですよ」と教えてくれました。
11月23日(祝・木)~26日(日)には、「紅葉の坂本 石積みの里めぐり」と称し、一帯でさまざまなイベントも開催されるそう。
「坂の多い街なので、歩きやすい靴で散策してみてください」とも。
詳しくは…
坂本観光協会 TEL:077(578)6565
延暦寺の守り神としても信仰される〝山王さん〟の総本宮
写真提供:日吉大社
美しい紅葉を背景にした日吉大社の山王鳥居(さんのうとりい)。独特の形は神仏習合の信仰を表す
【日吉大社】
比叡山の神「大山咋神(おおやまくいのかみ)」を東本宮に、奈良の三輪山からお迎えした「大己貴神(おおなむちのかみ)」を西本宮にまつる、全国に約3800ある山王系神社の総本宮。古事記にも記載のある古社で、延暦寺の守護神としても信仰を集めました。1571年の織田信長の焼き打ちで焼失しますが、豊臣・徳川の時代に再興されます。
広い境内には約3000本のもみじがあり、県内屈指の紅葉の名所です。
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- TEL:077(578)0009/大津市坂本5-1-1
9:00~16:30/拝観料:300円
四季折々の風情を庭園で楽しむ元里坊
赤茶色の建材と大きなガラス戸が印象的な旧竹林院の主屋
主屋の2階からも庭園を眺めることができます
【旧竹林院】
1592年に建立された里坊。現在の主屋(おもや)は明治30年に改築されたものです。八王子山を借景にした庭は約3300㎡の広さを誇る池泉回遊式庭園。2棟の茶室のうち、茅葺(かやぶ)き入母屋造りの茶室は、2つの出入口がある「天の川席」と呼ばれる珍しい間取りなのだそうです。
主屋は2階も公開。畳の部屋に座って庭をのんびり眺めるのもおすすめ。
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- TEL:077(578)0955/大津市坂本5-2-13
9:00~17:00/入園料:320円
坂本随一の格式を誇る里坊
写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
滋賀院門跡の勅使門。現在の建物は明治13年(1880年)に延暦寺から移築したもの
【滋賀院門跡】
坂本の歴史的景観を醸しているものの一つが「里坊」。数ある里坊の中でも特に格式が高いのが滋賀院門跡です。
信長焼き打ち後の1615年、慈眼大師天海が後陽成(ごようぜい)上皇から京都御所の建物を賜り移築したもので、江戸末期まで天台座主の居所でした。内仏殿、宸殿(しんでん)、書院などからなり、狩野派の襖(ふすま)絵や小堀遠州作の庭園を見ることができます。外周の穴太(あのう)衆積みの石垣も見事。天海の廟(びょう)所・慈眼堂は美しい紅葉でも知られています。
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- TEL:077(578)0130/大津市坂本4-6-1
9:00~16:30/拝観料:450円
穴太衆(あのうしゅう)積み
歴史とともに育まれた石積み技術
日吉馬場の北側に建ち並ぶ里坊の石積み。坂本観光協会の石川さんいわく、「日吉馬場を歩くなら北側の歩道の方が、雰囲気があっておすすめ。南側は石畳で歩きやすいです」
横小路と今辻子が交わる辺りの里坊の石垣。建物の屋根しか見えないのは地面が低いため。坂の街・坂本ならではの風景
坂本を他の街と趣を異ならせているのが、通りや里坊に見られる独特の石積み。この自然石を組み合わせた石垣を「穴太衆積み」といいます。
坂本の隣町・穴太に6世紀頃から住んでいたとされる渡来系の人々は、当時から石積みを得意とし、延暦寺創建時の土木工事や戦国時代の城壁普請といった実績により、石工技術者集団「穴太衆」と呼ばれるようになったのだそう。彼らは信長による焼き打ち後の坂本の復興にも活躍し、当時の石垣が今も〝現役〟で残されています。
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- 日吉馬場、滋賀院門跡周辺、里坊の石垣など、街の至る所で見ることができます
神猿(まさる)
日吉の神の使いはかわいいキャラクターにも
日吉大社の「神猿みくじ」(300円)。左側は金運上昇の「神猿みくじ(金)」(500円)
作り道に面した「鶴屋益光」で見つけた「比叡のお猿さん」(130円・税別)。こしあんがぎっしり詰まったもなかで、子ザルを抱いた姿が愛らしい
猿は、昔から日吉大社の神の使いとされてきました。京都御所の表鬼門にあたる日吉大社は魔除(よ)けの神。〝魔が去る〟〝勝る〟に通じる「神猿さん」は、魔除けの象徴として大切に扱われています。
境内には猿塚や神猿舎、猿の霊石など神猿さんゆかりのスポットも。西本宮楼門には軒下四隅と蟇股(かえるまた=2階部分の正面)に神猿さんがいるので探してみて!
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- 「神猿みくじ」日吉大社境内
「比叡のお猿さん」御菓子司 鶴屋益光
TEL:077(578)0055/大津市坂本4-11-43/水曜休み
馬場・作り道・辻子(づし)
日吉の神の使いはかわいいキャラクターにも
写真右が作り道。1940年の文献に「作られて180年程」とあるので、その歴史は260年前後のよう。同左は今辻子。住宅地にも穴太衆積みの石垣が
坂本には〝○○馬場〟や〝作り道〟など、一風変わった名前の道があります。その由来を大津市歴史博物館に聞いてみました。
▼作り道…老舗のそば屋や和菓子店などが並ぶ通り。昔この辺りにあった南大寺が火事で焼失、その後に作られた道というのが名前の由来
▼御殿馬場…作り道から滋賀院門跡(御殿)へと続くことから
▼権現馬場…日吉東照宮の参道から
ほかにも「瓢箪(ひょうたん)辻子」「北辻子」「よんどヶ辻子」「今辻子」といった昔ながらの道が残っています。
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- 各所