
家で飲むお酒、調べました@kyoto
今年の「中秋の名月」は10月1日。その前後に県内の和菓子店でお目見えする個性豊かな「月見だんご」を紹介します。 冒頭の「月」にまつわる和歌と併せて風流気分を味わって下さいね。
和歌鑑賞の時間
今回の特集テーマ「月見」の起源は平安時代にあるとか(中国好みの嵯峨天皇が、中国に倣って月見の文化を取り入れたといわれています)。当時の和歌には月を詠んだものが多いのですが、そこに込められた思いとは―。
同志社女子大学 表象文化学部
特任教授 吉海直人さん
専門は「源氏物語」や「百人一首」などの平安文学研究。「百人一首には月を詠んだ歌が12首収録されています。平安時代の歌に月がよく登場するのは、恋する男女が出会う夜の時間帯に見えていたからでしょう。一方で、『星』の歌はなぜかそれほど多くはないんですよ(笑)」
【有明の月・長月】有明の月とは、半月もしくは三日月で、月の下旬の夜明けの午前3時~5時に見える月。女性のもとを訪れていた男性が帰る時間帯です。ちなみに、この歌に出てくる「長月」は「9月」のことだけでなく、夜が長いことも表しています。
【夜半(よわ)の月】午前1時~3時頃に見える月のこと(午後11時~午前3時という説も)。この月が見える時間は、女性のもとへ通っていた男性がまだいるか、帰るかの時間帯です。そのため恋の歌に登場することもしばしばですが、今回紹介した歌はちょっと違います。
【秋以外の季節の月】清少納言の「枕草子」で冬の月は「興ざめするもの」とされていたせいか、冬の月を詠んだ歌は少数。ちなみに「春の月」の歌としては「照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜にしくものぞなき」(大江千里、新古今和歌集 五五番)が有名。こちらも珍しいパターンです。
自然豊かな「寿長生の郷(すないのさと)」で〝農工ひとつの菓子づくり〟を目指す「叶 匠壽庵」。「雲遊びゐる月兎」は、月をかたどった丸い輪っぱのふたを開けると米粉の歯切れの良い月見団子と、こし餡を包んだ紅白の薯蕷(じょうよ)まんじゅうが。十五夜の満月のもとで遊ぶウサギたちの様子に心がほぐれます。
甲賀市の老舗「御菓子司 大彌」では満月とすすきの焼き印を押した「お月見だんご」を販売。「黄身餡をなめらかなういろう生地で包んだ上品な味わいです」と6代目・中西彌介さん。50年以上前から中秋の名月の時季にしか食べられない大彌の定番で、毎年店頭に並ぶのを待ちわびる人も多いそう。
深まりゆく秋、美しい月をめで収穫に感謝する十五夜。サトイモのかたちを模した「たねや」の「きぬかつぎ」はみずみずしいこし餡をあっさりした団子生地で包んであります。上に乗っている小さな団子はサトイモを掘り出す時に付いてくる孫芋を表現。中秋の名月にちなむ愛らしい一品です。
明治18年の創業以来、日本の四季と野洲の文化の魅力を菓子で発信している「御菓子司 梅元老舗」。表面にココナッツをまぶした餅でカスタードクリームを包んだ洋風の「お月見もち」は冷やしても美味。サトイモに見立てた「月見団子」はほんのり甘い円すい形の団子にあっさりとしたこし餡を巻いてあります。
石山寺の参道添いの「茶丈藤村」では、串に通したまんまるの形がなんともかわいい「月見のおだんご」を販売。米粉を使ったしこしことした食感の団子に、色鮮やかな栗餡(あん)と黒糖を加えた小豆餡を〝きぬかつぎ〟のようにかぶせて月の満ち欠けを表しています。数量限定のため早めに予約を。