
矢橋帰帆島公園で
守山市にある「NORA(ノーラ)わくわく食育こども食堂」の食事風景。「子ども同士で遊ぶようになったり、離乳食や保育園情報など意見交換ができて楽しい」と保護者も笑顔に
子どもに食事を提供するだけではなく、学習支援や体験活動、地域交流の場としても注目されている「子ども食堂」。広がる状況や多様化する役割について、滋賀県社会福祉協議会に聞きました。県内にある子ども食堂にも取材しましたよ。
地域の子どもたちに無料または低料金で食事を提供する「子ども食堂」。2012年に東京の青果店が始め、のちに全国に広がりました。
滋賀県内の子ども食堂の開設・運営をサポートする「滋賀県社会福祉協議会」の三宮千香子さんによると、「2024年には、全国の子ども食堂の数が1万を突破したようです。滋賀では2015年に『縁(えにし)創造実践センター』(※)のモデル事業として『遊べる・学べる淡海子ども食堂』がスタート。10年たち、県内に2025年5月現在で239カ所開設されるほどに成長しました」とのこと。滋賀でも定着しつつあるようです。
(※)福祉専門家や民間福祉関係者らが集まり、地域福祉の課題に取り組む有期の組織団体として2014年に創設。2019年から滋賀県社会福祉協議会が運営
「子ども食堂の数が増えた分、利用者が居場所を選べるうえに、好きなタイミングで行けるようになりました」とメリットをあげる三宮さん。
「もともとは、おなかを空かした子どもへの食事の提供、〝孤食〟の解消といった目的から始まりましたが、次第に子どもから高齢者まで、誰もが利用できる地域交流の場として浸透。そのあり方や役割が多様化しています。異年齢の子たちが交わる様子は、昨今縮小しつつある子ども同士の交流の場の役割もあるのではとも感じています」
子ども食堂を運営するのは、地域の活動団体、企業、個人店主、保育園、学生、〝ママ友〟同士など顔ぶれもさまざま。中には、朝や夜ご飯を提供するところもあれば、平日のランチタイムに親子で利用できたり、週末に遊びや学習支援も取り入れて長時間受け入れるところがあったり。開催日時や頻度、内容も多岐にわたるそう。
三宮さんは「いずれも、子どもが安心して過ごせる居場所であることを大切にして活動されています。食材の確保や後継者といった問題を抱えるところもありますが、子ども食堂同士で人手不足を補い合ったり、食材をシェアするなど協力もされています。運営者がしんどくならない方法を見つけて、さらに良い方向に進んでいけたら」と期待を込めます。
滋賀県社会福祉協議会が行う「子どもの笑顔はぐくみプロジェクト」。これは、滋賀県内に200カ所以上ある「遊べる・学べる淡海子ども食堂」の継続的な運営などの、子どもを中心とした地域づくりをバックアップするための応援団をつくるプロジェクトです。こちらのウェブサイトでは、同プロジェクトの取り組み内容に加え、県内にある子ども食堂の詳細をエリアごとにチェックできます。気になる人は、近くの子ども食堂を探してみては。
子どもの笑顔はぐくみプロジェクト=https://shiga-hug.jp/
学校に行きづらい子どもとその保護者が毎月1回、平日の昼間に集う「唐崎カピバラ食堂」。昨年5月、不登校の親の会でつながった4人の母親が大津市の唐崎公民館で始めました。
「フリースクールや教育支援センターは子ども単独の参加なのでハードルが高いけれど、お母さんと一緒なら出かけられる。そんな子どもとその親が、安心して参加できる居場所をつくりたかったんです。子どもたちは同じ境遇の友達に会えたり、ボランティアのお兄ちゃんと遊んでもらったりして楽しそうです」と代表の大町千恵さん。
スタッフを含めて毎回20人以上が参加。ごはんができるまで、子どもたちはゲームをしたり、料理を手伝ったり自由に過ごします。
「子どもが不登校になると、親は働き方を変えないといけなくなり、一日中子どもと2人きりで過ごす毎日が続いて気持ちが沈むことも。それでも月に1回ここに来て、周りに支えてくれる人がいることを実感して、またがんばろうって前向きな気持ちになってもらえたらうれしい」と、親の心にも寄り添います。
「NORAわくわく食育こども食堂」は、収穫体験などを通して地産地消や食育に取り組む〝農活〟サークルが運営。守山市にあるカフェ仕様のレンタルスペース「MAGNETS‐マグネッツ‐」で、毎月第4金曜に開催されています。
食育アドバイザーで代表の佐野恵実さんは、「サークルでつながった地元農家さんの協力もあり、新鮮野菜が手に入りやすい環境にあります。皆さんに栄養価の高い、旬野菜のおいしさを知ってほしいですね」と料理の腕を振るいます。
メニューは県産米のおにぎりのほか、地元野菜を使った具だくさんのみそ汁と小鉢。みそ汁にはトマトやオリーブオイルを使うといったアレンジも加え、レシピはSNSで配信もしています。
「平日の昼間にやっているので、日中は小さな子どもと二人ぼっちというママの居場所にもなれば。年配のご近所さんが食べに来たついでに育児の相談に乗るなど、多世代の交流も見られます」と佐野さん。
参加した保護者からは「ここに来ると子どもが好き嫌いせずに食べてくれる」と喜ぶ声が。長期休暇に小学生らが食べにくるのも楽しみにしているそうです。
子ども食堂「フードリボン 夢食堂 赤だし屋」は、JR「草津」駅の近くに。居酒屋「魚貝焼きと寿司酒場 赤だし屋」が手掛けています。こちらでは、居酒屋を利用する客が一つ200円のリボンを子どもの1食分として先払い購入し、中学生以下の子どもがそれを使ってごはんを食べることができます。
これは、全国約260カ所の飲食店が展開する「フードリボンプロジェクト」の支援方法で、滋賀では同店がいち早く取り入れました。
子ども食堂は、店が休みの日以外、ほぼ毎日開店前に実施。メニューはそのときにある食材を使うので、から揚げや焼き魚など日によって変わるそう。「毎日やることで子どもが必要とするときに、いつでも駆け込める場所があると知ってもらえたら」と店主の松下佳弘さん。
「仕事や家事に忙しい親御さんが、『今日はごはんづくりを休みたい』というときに利用してもらっても」と、子育て世代を応援します。付き添いの大人には200円で提供。
現在は、支援のリボンの数が利用者数より多い状況が続いていて、遠慮は無用とのことですよ。